いいまちには、いい店がある。
サンポ屋は、生活者の目線からまちを歩いて、地域に根付く個人店や、そこで暮らす人たちを訪ねている活動です。
お店に行って、話を聞く。
なんか好きだなぁと思った風景を写真に残す。
旅先で出会った場所のことを書く。
日々の暮らしのなかで、ふと感じたことを残しておく。
そんなことを、19歳の頃から続けています。
まちにあるものを、「まちの魅力」としてきれいにまとめたいわけではありません。
ただ、そこにあるものを見ていたい。
その場所でどんな人が暮らしていて、どんなお店があって、どんな時間が流れているのか。
わたしが歩いて、見て、話して、なんかいいなと思ったものを、そのときの自分の目線のまま、言葉と写真で残しています。
まちって、新しくできたものや、目立つ場所だけでできているわけじゃない。
わざわざ紹介するほどでもないようなものが、案外そのまちのことをつくっている気がします。

好きなまちに、住みたい。
サンポ屋を始める前、賃貸物件を紹介する取材ライターのアルバイトをしていました。
お部屋を探すときは、駅からの距離や家賃、設備など、利便性をもとに住む場所を選ぶことが多い。
でも、家を見に行くうちに、だんだんまちのほうが気になってきました。
このまちにはどんなお店があるんだろう。
どんな人が住んでいるんだろう。
夕方になると、どんな雰囲気になるんだろう。
まちって、それぞれ全然違う。
「住みたいまち」としてよく名前が挙がる場所じゃなくても、歩いてみたら、なんとなく好きになるまちがある。
「なんで好きなの?」と聞かれても、うまく説明できないけど、なんか好き。
そういうまちに住むのって、けっこういいんじゃないかなと思いました。
好きなまちを見つけて、そこから住む家を探してみる。
そんなふうに暮らす場所を選ぶ人が、もっといてもいいんじゃないかな。
それで、まちのことを知るために、まずは気ままに歩いてみようと思って始めたのがサンポ屋です。

喫茶店に救われた、ある日のこと
10代の頃、仕事がつらかった時期に、喫茶店に救われたことがあります。
はじめて入ったお店なのに、話を聞いてくれて、知らない人たちがみんなで励ましてくれました。
みんなひとりで来ているのに、なんとなく会話があって。それぞれ好きなように過ごしているけど、そこにいる人同士が、なんとなくお互いのことを気にしているような感じ。そのゆるやかな関係性が、長年続いているのです。
そのお店に通ううちに、「このお店があれば、わたし苦しくても逃げずに頑張れるかもしれない」と思えるようになりました。
生きていたら、日々楽しいことばかりではない。
頑張りたいことならなおさら、すぐにはどうにもできないことだってある。
そういうものを抱えたまま、それでも一緒に携えて生きていく。
わたしにとって、そのために必要だったのが、少し息を抜いて、安心できる場所でした。
それから、個人店が大好きになりました。
誰かが自分らしくやっているお店。
ふらっと行って、自分の好きなように過ごせる場所。
知らない人同士でも、なんとなく一緒にいられる場所。
そういうところにいると、ひとりじゃないような気がする。
そんなお店があるまちが、好きです。

好きなお店が、好きなまちをつくる
好きなお店ができると、
「この店の近所に住めたらいいのにな」
と思うことがあります。
いつでも行けて、いつもの人に会えて、ちょっと話して帰る。
そんなお店が近くにあるだけで、暮らしってけっこう変わる気がします。
個人店って、ただごはんを食べたり、珈琲を飲んだりする場所じゃないのかもしれない。
家とは別に、なんとなく心を置いておける場所。
まちのなかに、そういう場所がいくつかあると、ちょっと安心して暮らせるんじゃないかなと思います。
だから、好きなお店がちゃんと続いていくことも、わたしにとってはとっても大事なことです。
わたし自身が喫茶店に救われたように、誰かにも、
「この店があってよかった」
と思える場所が見つかればいい。
サンポ屋で紹介するお店や、これからつくっていく場が、そんな場所を見つけるきっかけになったらうれしいです。

