飯能ってどこにあるの?
東京・池袋駅から西武池袋線に乗り、約1時間。埼玉県南西部にあるまち、飯能へ。
“東京から一番近い秘境”とも呼ばれているらしい。
わたしは新宿・歌舞伎町を散歩したあと、そのまま飯能へ向かったのだけれど、電車に乗っている時点でもう空気が違った。
静かで、余白がたっぷりある感じ。
都会の緊張感が、少しずつほどけていく。

大阪から来たわたしには土地勘がなく、地図を見ても「うん、山だね!」という感想しか出てこなかった。
けれど実際に歩いてみると、飯能は“田舎すぎない”ところがとても心地よかった。
山や自然がすぐ近くにありながら、駅前にはスターバックスやミスタードーナツ、ガストなどのチェーン店もある。
暮らしに必要な便利さと、自然の近さ。そのバランスがちょうどいい。
何も調べずに、さんぽしてみよう。

駅を出ると、まず目に入ったのが控えめで可愛らしいアーケード。
シンプルなデザインが、広い空によく似合っている。
お店が主張しすぎず、まち全体がゆったり呼吸しているようだった。
「もう今日は、マップを見ずに歩いてみよう」
そう決めて、気になる方向へふらふらと進む。
飯能銀座商店街

昭和レトロなお店が並ぶ通りなのだけれど、不思議なくらい“商店街感”が強すぎない。
道幅が広く、生活と自然につながっている穏やかな空気がある。


飯能のまちは、植物とともに暮らしていた
特に印象的だったのは、家々に植物が多いこと。
玄関先や庭先で、お花や緑を育てている人が本当に多かった。
きっと無意識なのだと思う。
自然を暮らしの近くに置いて、小さな幸せを感じながら生きている。
「お花きれいですね〜」
そんな会話が自然と生まれるまちなのかもしれない。
暮らしの中に、小さな接点がたくさんある。
そういう場所って、きっといいまちだ。





駅から15分で出会える大自然・飯能河原
突然、息をのむような景色が現れた。
飯能河原。
ただただ、美しい。
吸い込まれるように河原へ降りていく。




河原でお昼寝したり、友人とおしゃべりしに行ったり、本を読んだり…
こんな愛おしい日々、ぜんぶ無料でできる。
都心で働きながらも埼玉に住むきもちがとてもわかるような気がする。
こんなふうにバランスを取れるなら、なんとか頑張れるかもしれない。
飯能のまちが持つ、最大のギフトのような気がする。
自然と笑みがこぼれるような、愛おしい景色。ありがたいなぁ。地球って、すごいね。
アンティーク喫茶「銀河堂」で、ひとやすみ
少し歩き疲れて、ふらりと立ち寄ったのが喫茶店「銀河堂」。

蔵を改装した空間には、アンティーク家具や古いインテリアが並び、少し暗めの照明が落ち着く。


音楽が心地よく、窓際の席でつい長居してしまった。
旅先で入る喫茶店って、そのまちの生活を感じられる場所だと思う。
飯能の喫茶店には、急がなくていい空気が流れていたように感じる。
「あとから効いてくる本」が並ぶ場所|本とビール・カモシカ
大通り沿いで、ガラス張りの開かれた空間が目に入った。
気持ちよさそうだなぁと思い、なんとなく入ってみる。

ここは、まだオープンしてから半年も経っていない、元鋼材店をリノベしたシェアスペース「偏愛デパートメント・やまにわ」の中にあるブックカフェ。

店内には、本が余白たっぷりに並んでいる。
本屋というより、小さなギャラリーのような空間。
席も静かに本を読むことを前提に作られていて、図書館のような心地よさがあった。

そして、こんな言葉が目に入る。
「ここには、“すぐに役立つ本”はありません。あるのは、“あとから効いてくる本”です。」

今の自分に、あまりにも響いた。
空間全体が、その思想を静かに体現している。
クラフトビールの醸造家さんが運営していて、カウンターでお店やまちの話をゆっくり聞かせてもらった。
肩に力の入っていない、静かな深みのある人柄。
こういう人がいる場所は、空気までやわらかい。
風を感じながら、本を読み、ビールを飲む昼下がり。
なんて贅沢なんだろう。



公式インスタグラム:https://www.instagram.com/yamaniwa_hanno/
「ひとり」をひらく本屋|本屋 ひとりごこち
今回の旅で、いちばんの目的だった場所。
2026年3月にオープンした「本屋 ひとりごこち」。
築60年ほどの古民家「森口金物店」を引き継ぎ、喫茶と展示室を併設した本屋として生まれ変わった。
運営するのはデザインスタジオ「ひとりごこち株式会社」。

今回ここで、「まちの本屋からローカルをリパブリックする会議」というイベントが開催されていた。
以前から気になっていた場所で、ついに来ることができた。
しかも昔著書を読んだことがある「まめくらし」の青木純さん・最近知って気になっていた「Huuuu」の徳谷柿次郎さんがゲスト。

社長のまひろさんは29歳。
空間へのこだわりを見れば、きっと大きな覚悟があったのだと思う。
それでも彼は、
「場をつくるのは早い方がいい」
と言う。
ライフステージが変われば、始めるエネルギーがなくなるかもしれない。
でも、先につくっておけば、暮らしとともに続けていけるかもしれない。
その言葉に、生活者としての誠実さを感じた。
社会を変えようと大きな言葉を掲げるのではなく、まず自分ひとりが心地よく生きられる場所をつくる。
そこから、外へひらいていく。
「ひとりごこち」という名前そのものが、その思想を表している気がした。

イベントも満席。
みんながぎゅっと詰めて座り、話を“聞く”というより、一緒に場をつくっている感覚だった。
誰かが覚悟を決めて、「わたしはここにいる」と軸足を置く。
すると、その空気に人が集まってくる。
人が持つ力って、すごい。
「ないなら、つくろう」が息づくまち
まひろさんがイベント中に話してくれた、
「ほしいものがあるまちに行く」のではなく、
「ないなら、自分たちでつくろう」
という感覚。
暮らしの中で、ほんとうに必要なものを、自分たちの手で少しずつつくっていく。
その姿勢が、このまちにも、静かに根づいている気がした。
派手ではない。
でも、だからこそ強い。
生活を耕す人たちがいるまち。
飯能は、そんな場所だった。


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