菊の湯で見つけた、ちょうどいい豊かさ。 — 長野県松本市・菊の湯

菊の湯 松本 銭湯

菊の湯で過ごす、湯上がりの時間

お風呂上がり、
銭湯の二階にある和室で、アイスクリームを食べる。

選んだのは、「安曇野北アルプス牧場」のかぼちゃ味。
一緒に、「おいしいかふぇおれ」を飲む。

どちらも、長野でつくられたもの。

湯上がりの体に、やさしく染みていく。

おいしいかふぇおれ

小ささが心地いい

ここは、とても小さな銭湯だ。

脱衣所では、
「すみません」と声を掛け合わないと通れないくらいの距離感。

でも、どこを見てもきれいで、清潔で、
その小ささがむしろ心地よく感じる。

このサイズだから、きっとちゃんと手入れができる。

そう思った。

自分の手で、きちんと面倒を見られる範囲。
無理のない大きさ。

菊の湯は、わたしにとって
「ちょうどいい」と思えるサイズだった。

このサイズ感なら、わたしでも、日々きれいに保つことができるかもしれない。

そしてそれは、そのまま理想の大きさでもある気がした。

選び抜かれた物販と余白

物販は、
アイスクリームが数種類と、ドリンクが少しだけ。

カフェオレ、牛乳、地サイダー。

種類も少なく、なぜこれを置いているのかが説明できるようなこだわりの品ばかり。

それだけ。

水は、自由に飲めるように置いてある。

銭湯を改修したときの記録本や、
センスがきらりと光るグッズたち。

菊の湯 銭湯 物販ディスプレイ

余白をたっぷりとった置き方に、
ひとつひとつ丁寧な説明書き。

どの品も、ただ並べられているのではなく、
ちゃんと紹介されているように感じる。

それぞれに手をかけて、
たいせつに扱っていることが、静かに伝わってくる。

ダンボールでつくられた三角POP。

簡易的な素材なのに、どこか美しくて、
そこにある理由が、きちんとあるように思えた。

無駄にゴミを増やさないという意思。

そして、
「街と森を結ぶ」という言葉。

菊の湯だからこそ、
このダンボールは、ただの代用品ではなくて、
ちゃんと意味を持って、ここにある。

パンフレットやショップカードも、
入り口にきれいに整えられている。

菊の湯

多くはない。

でも、足りている。

デザインに宿る思想

脱衣所の床は、1枚1枚手作業で名栗(なぐり)加工をされたようで、裸足で歩くと木のやわらかさを感じる自然素材。
貸し出しのフェイスタオルも、同じくやさしい手触り。

環境に配慮されたハンドソープ。
古材でつくられた棚。

菊の湯 

鏡に貼られた広告は、手書きのデザインで揃えられていて、
壁には、小さなイラストがところどころにある。

どこを切り取っても、控えめで、整っている。

広告らしい広告は、ほとんどない。

この銭湯は、向かいの本屋「栞日」さんが継いだ場所で、
デザインはReBuilding Center JAPANが手がけている。

この「引き算の美しさ」が心地いい。

栞日 本屋
本屋 栞日

全体に流れる、静かな統一感。

ここにいると、落ち着く。

なにが、この場所をこの場所らしくしているのか。

なにに、こんなにも惹かれているのか。

諏訪も、松本も、
どこか同じ空気をまとっている気がする。

「ちょうどいい豊かさ」をつくる経営

どうしてこんなにも、
「直接的に利益にはつながらないかもしれないけれど、
たいせつにしたいもの」をたいせつにしたまま、
経営という荒波を乗り越えられるのだろう。

きくちとおるさんは、松本市議会議員になったのだそう。

まちの本屋を営み、銭湯を営み、そして政治にも関わっている。

本屋のレジで、にこにこと、やわらかく接客をしてくれた。
その姿を見ていると、
なにをたいせつにしている人なのか、
説明されなくても、なんとなく伝わってくる。

栞日 本屋

本屋も銭湯も、生活のインフラだ。
大きく稼げる仕事ではないかもしれない。

それでも、まちにあるだけで、
近くに暮らす人の生活は、たしかに心地よくなる。

遠くの誰かではなく、
ここにいる人の暮らしを、少しだけよくするための仕事。

無理に拡大しない。
思想をなんども確かめる。

「なんのために、この仕事をしているのか」

その問いを見失わないまま、
現実的に続けられる範囲を、静かに見極めていく。

何を残すか。
何を削るか。
どこで無理をしないか。

その選択の積み重ねが、
そのまま、その人の思想になっていくのだと思う。

誰かの生活に、ちゃんと必要とされるもの。

なにも話を聞いていなくても、
あなたがたいせつにしたいものが、
すっと伝わってくるような気がした。

栞日 本屋

実はこのあと、リーダーの方と一緒にカフェでお話しする機会があった。

わたしも銭湯で広報の仕事をしているから、
少しだけ似た立場として、言葉を交わすことができた。

運営の難しさや、続けていくことの現実。

その話を聞いて、
この場所の「ちょうどよさ」は、
偶然ではなく、いろんな人が必死で選び続けてきた結果なのだと感じた。

店舗情報

菊の湯

  • 営業時間
     15:00〜23:00
     日曜朝風呂|7:00〜23:00
  • 定休日
     水曜日

※こちらの記事は2026年5月時点の情報です。
最新の営業状況は、公式Instagramをご確認ください。

Instagram(@sioribi_kikunoyu

菊の湯 松本銭湯
菊の湯 松本銭湯
菊の湯 松本 銭湯

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