変わらないという仕事。— 大阪市大正区・井尻珈琲焙煎所

井尻珈琲焙煎所

「いまから淹れるけど、アイスで大丈夫?」

わたしが
「ミルクコーヒーのホット……やっぱりアイスで!」
なんて曖昧なことを言ったから、
わざわざ聞き直してくれたのだと思う。

尻無川 夕焼け 大正

バスに乗って、大正のまちに降り立つ。

少しだけぶらぶら歩いて、
コンビニで豚まんを買う。

100円高い黒豚まんはちゃんとおいしくて、
まだ少し肌寒い夕方に、ひとりで食べながら歩く。

お店に入ると、
氷の音が静かに響いていた。

グラスの中で氷をカラカラと回して、
ひとつ足して、
ゆっくりと珈琲を注いでいく。

井尻珈琲焙煎所 メニュー表

本を読んでいる人。
窓の外には、夕方のまち。
照らされたレコードと、焙煎機。

なにもしないでいる人が多い。

お湯を注ぐたび、煌めく珈琲。

本の中の世界よりも、
今この瞬間のほうが、美しいと思えた。


心地よくて、たまらない。

井尻珈琲焙煎所

この人の仕事は、いつ見てもきれいだ。

特別ゆっくりなわけではないのに、
すべてをひとつずつ、確かめるようにやっている。

机の上には、余計なものが何もない。

レコードが止まれば、
静かに針を落としにいく。

豆を灯りの下にかざして、
古いものをひとつひとつ選り分けていく。

正直、時間はかかる。

でも、その様子を見ていると、
珈琲はうれしいだろうな、と思う。

そしてその一杯を、
自分のために淹れてくれていることが、うれしい。

井尻珈琲焙煎所 珈琲
深煎珈琲専門店

「僕は、珈琲以外のことはできないから」

そう言って、
お菓子は別の人と一緒につくっているのだと教えてくれた。

このお店に合う、シンプルなおやつ。

普段はコース料理を出すような店に、
あえて、この店のためにお願いしているらしい。

チョコテリーヌ。
チーズケーキ。
ラベンダーのサブレ。

そのやり方すべてに、
この人の思想が見える。

そのやり方すべてに、
この人の思想が見える。

点ではなくて、線でつながっている。

すべてが、ちゃんとつながっている。

それが、どうしようもなく美しいと思った。

ここにいると、
その空気が、少しだけ自分の中にも入ってくる気がする。

井尻珈琲焙煎所

大事だと思うことをやろう。

真摯にやろう。

そう思わせてくれる。

グラスについた水滴が、
オレンジ色の光を反射している。

ストローで、ほとんど水になったミルクコーヒーを吸い上げると、
ふわっと茶色が広がった。

井尻珈琲焙煎所 レコード

「四月で、十年目になります。」

「何も変わってない。メニューも、ずっとこのまま。」

レコードも、最初から。
この空気も、最初から。

「周年イベントとかも、特にやらないんです。」

だから、気づいたら十年。

井尻珈琲焙煎所

なにか大きな出来事ではなく、
ちいさな毎日が積み重なって、
それは「姿勢」になるのだと思う。

ここにいると、涙が出る。

たいせつにしたいものを、思い出すから。

今目の前で起こっていることがすべてではなくて、
最終的には、なにを信じて続けてきたか。

それが、姿勢としてあらわれる。

わたしは、あなたの仕事が好き。

店舗情報

井尻珈琲焙煎所

  • 営業時間
     11:00〜19:00
  • 定休日
     Instagramで更新

※こちらの記事は2026年5月時点の情報です。
最新の営業状況は、公式Instagramをご確認ください。

Instagram(@ijiri_coffee

井尻珈琲焙煎所 大正カフェ
井尻珈琲焙煎所 大正カフェ
井尻珈琲焙煎所

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